デジタル一眼レフやミラーレスカメラで写真を楽しむ人が増えています。もちろん後工程としてRAW現像などのレタッチ作業があります。
そうしたレタッチの精度をより高めるために必要なのが、ディスプレイのハードウエアキャリブレーションと呼ばれる作業。(対応したディスプレイが必要)ディスプレイの色を管理することで、利用者に見てもらいたい色が届く可能性が高まります。
しかしイマイチ必要性や理解が追い付かないということがあるかと思います。僕自身も「なんとなく良さそうだから」という理由だけで環境を整えてきましたが、これを機に色を管理することの重要性を振り返りたいと思います。
あくまで忘備録的な意味あいが強いですが、これからディスプレイの色の管理に着手しようと思っている方の不安をぬぐうことができれば幸いです。
目次
カラーマネージメントとは?
ディスプレイで見た通りの写真のまま、出力をしたいのであればカラーマネジメントは避けて通れません。そしてその軸となるのがプロファイルです。
プロファイルは、ディスプレイ、カメラ、プリンタ、スマホなどなど色を表現している機器で個々に設定されています。(またはされていない)ある意味で無法地帯となるため「プリントをするとディスプレイで見た色と違う」といったことが起こります。
プリンタやディスプレイは物理的にも性質が違うものなので、色表現能力がまったく同じという訳にはいきません。そこで、プロファイルの色味をすり合わせてやることで、間接的に同じ基準を作り出す必要がでてきます。言わば物差しや通貨のようなものだとイメージしてもらってもよいかもしれません。
条件を整えることで、お互いのミスマッチが起こらない状態にしておくのです。
カラーマネジメントの重要性・メリット
カラーマネジメントの重要性を一言で言ってしまえば、個人レベルの色を管理できるということです。
イメージをつかんでもらうために図を用意してみました。かなりザックリとしているので、微妙かもしれませんがイメージはおおよそ伝わるかと思います(笑)
特定可能な環境同士はすり合わせが可能なため、双方の環境を合わせることが可能です。印画紙や依頼先に合わせた高度な設定も可能になってきます。
ただ、実は流通しているディスプレイや、タブレット、スマホなどはそれぞれバラつきがあります。なので、いくら自分の手の内側を管理していても無意味ということにもなりかねません。不特定多数の人に向けての発信は難しさをともないます。
では「やらなくて良いのでは?」と思うかもしれませんが、それも少し違います。
基準を持つことで当違いの色を発信するリスクが減ることを覚えておきましょう。一般向けであればsRGBを満たすことで、自分の中での責任は果たしたという考え方もできます。
どっちを使う?Adobe RGB とsRGBのちがい
出典:Eizo
今回のカラーマネジメントで利用するAdobe RGBは、色域が広くsRGBに比べると特に青や緑の領域の色再現に優れています。Adobe RGBを満たしたディスプレイなら、より高品位なデータを納品できるため高いニーズに応えることが可能になります。
とは言え、実は僕たちが良く目にするネット業界のほとんどがsRGB基準です。多くの人が目にするという点では、こちらを基準にしたほうがコスト面でも安価ですし、自分の届けたい色が伝わる可能性も高まる傾向にあります。(見る人の環境が管理されているとは限らないので注意)
もし写真や動画の製作のためにディスプレイを買うのであれば、最低でもsRGBを満たした製品を購入しておくほうが良いことも伝わるかと思います。
自分の基準をどちらに置くか?を考えて作品作り、製品選びを行いましょう。
カラーマネジメントに必要な機材
カラーマネジメントに必要な機材は、ハードウエアキャリブレーションに対応したディスプレイとカラーマネジメントセンサーです。もちろんパソコンソフトも必要になってきます。
ディスプレイ:BenQ SW271
キャリブレーター:x-rite i1 Display Rro
ソフト:Palette Master Element
他にも写真編集におすすめのディスプレイを知りたいという方は、こちらの記事をどうぞ。
x-rite i1 Display Rro
カラーマネジメントができるディスプレイだけでも結構な費用が発生しますが、この子も例にもれずレンズ1本くらい買えるお値段。
しっかりしたディスプレイを購入すると出荷時にちゃんと調整してくれているので、焦ってすぐに購入する必要はありません。使用頻度が少ない人なら半年くらい先まで伸ばしてもOKな気がします。無理はせず少しづつ環境を作っていきましょう。
スライドしてやると綺麗な瞳が登場。
BenQ SW271
- 27インチ4K UHD 解像度
- Adobe RGB色域に99%準拠
- ベゼルレス仕様
- ハードウエアカラーマネジメント対応
BENQさんに「カラーマネジメントの記事を書きたいんです」と伝えたところ「じゃあ、うちのを使ってください」ということで機材(SW271)の貸出協力を頂きました。ありがとうございます。
SW271は4K解像度と、Adobe RGB99%カバーという写真編集に最適なスペックを持ちながら実売価格を抑えたコスパの高いディスプレイです。
コスパが高いといっても決してお安くはないので、趣味で使うならもう少し控えめの物でも良いかもしれません。
例えば同社のSW2700PTは、WQHD(2560×1440)と解像度は落ちますが、実売7万円前後と手を伸ばしやすい製品になっています。
僕は設置スペースが限られているので、24型のSW240を愛用しています。こちらは遮光フードが別売りなので注意!
BenQ SW271をカラーマネジメント!
Palette Master Elementをダウンロード
[btn]⇒Palette Master Element[/btn]
実際にキャリブレーションに入っていく前に、まずはパソコンにソフトをダウンロードしましょう。BenQ SW271の製品ページ⇒サポート⇒ソフトフェアの順番で進んでいきます。最近はドライブ非搭載のパソコンも増えいるので、ネット環境だけで完結するのは有難いですね。
またユーザーマニュアルも用意されていますので、一度目を通しておくと良いでしょう。
Palette Master Elementをインストール
インストールは特に難しくありません。画面案内に従って進めていきましょう。インストールが終わるとパソコンが再起動します。
BenQのSW240も愛用しているので、テストで接続してみました。自動でしっかりSW240だと認識してくれています。
ディスプレイ・パソコン・キャリブレーターを接続する
用意ができたら、それぞれの機器を接続していきます。接続方法は「パソコン⇔ディスプレイ」
「ディスプレイ⇔キャリブレーター」です。キャリブレーターを直接パソコンにつながないようにしましょう。また、正確な色調整を行うために、パソコンやディスプレイの暖機運転を30分ほどしておくと良いでしょう。
ちょっとややこしいですが、ここを間違うとソフトがエラーを出して進まなくなってしまうので注意が必要です。
Palette Master Elementの設定方法・手順
Palette Master Elementで最初にやることは、プロファイルの作成です。
ホーム画像で接続しでいるモニター、キャリブレーション装置に間違いがないかを確認をします。詳細モードにチェックを入れて開始をおします。
基本的には初期設定のままでOKなのですが、設定がわからなくなったり、迷ったりした時に活用ください。
プロファイルの作成を選んで次へ。ディスプレイの設定へと移ります。
ディスプレイの設定
既定は写真家(AdobeRGB)を選択します。
白色点はD65を選択。これは色温度を表しておりD65だと6500K(ケルビン)の照明で作業していますよということ。一般的な家庭の照明や自然光ならD65で問題ありません。D50は5000K(ケルビン)という訳です。照明器具に5000Kの色評価蛍光灯を利用している人はこちらを選択します。
RGBプライマリは、色域の広いAdobe RGBがおすすめ。(SW271はAdobeRGB99%カバーしているから)
輝度はデフォルトのまま160で良いです⇒メーカー担当者さんによると160だと明るいので120がおすすめとのこと。夜間や暗い部屋なら80に設定しても問題ありませんとコメントいただきました。
Windows環境でガンマは2.2になっていますので、そのままでOK。(Macなら1.8推奨とのこと)⇒Macも最近で2.2になったそうです
ディスプレイ設定が終わると測定値へと移行します。
測定値の設定
キャリブレーションのプリセットには校正1と表示されています。ICCプロファイル名は前工程で設定した数値を元にファイル名が自動で作成されます。特に理由がない限りは変更する必要はありません。
これらの設定が終わると、右側にある測定開始を押します。するとセンサーを準備するようにうながされます。
i1 Display Rroを画像の通りにセットし続行。すると画面が明るくなったり暗くなったりを繰り返します。
SW271の遮光フードには、センサーを通すために窓があります。重りを垂らして定位置に調整しましょう。
校正1の作業完了にかかった時間は8~10分程度です。頻繁にディスプレイを使う人でも、月に一度くらいで十分。初回はソフトのインストールなどもあるので少し時間はかかりますが、慣れてくればそこまで手間という訳でもありません。
キャリブレーションレポートが作成されます。キャリブレーションを有効にします。
これでキャリブレーションは完了です。お疲れ様でした!
SW271側で設定可能になる
キャリブレーションが終了したら、BenQ SW271側から設定が可能になります。キャリブレーション時に設定した色領域や色温度、輝度などを一瞬で切り替えられます。
これがキャリブレーションのおおよその全様になります。後はご自身のデータを元に画作りを行いましょう!
まとめ
キャリブレーションを通して、少なくとも自分の手の内側は管理をすることができます。ディスプレイの色味に悩まされることも、プリントの出来がまったく違うというストレスからも解放される可能性が高くなります。
あくまで例えですが、色を管理しないのは目的地だけ決めて自分の位置がわからない地図のようなものです。スタート地点がわからなければ、どれくらい時間や費用がかかるのかわかりませんよね?だいたいこっちだと思っていたら真逆に進んでいる可能性だってある訳です。もちろんどこで間違えたかの判断もできません。
そういう意味では、たとえ趣味であっても仕上がりを意識するのであれば、色を管理するのは重要なことだと思います。難しく考えると行き詰りますが、工程自体はさほど難しくありません。
写真のためにも、カラーマネジメントという工程を加えてみてはいかがでしょうか。i1 Displayには専用ソフトも用意されていますのでお好みでどうぞ。