一眼レフやミラーレスカメラ、スマホなどの高性能化にともない「4K動画」が身近になってきています。当然の流れのように「自分で動画を編集したい」というニーズは高まりつつあります。
僕のところでもそうした相談をもらったことがありますが、4K動画編集向けのパソコン選びというのはなかなかにハードルが高め。無駄に高額な製品をすすめる訳にはいかないので、スペック不足に陥らないラインを見定めて…と、かなり悩みながらアドバイスした記憶があります。
そういった経緯もあり「餅は餅屋に」ということで、マウスコンピューターのクリエイター向けブランド「DAIV」の担当者さんに「4K動画編集におすすめのパソコンの選び方(スペック)」について質問してきました。
クリエイター向けPCブランドの担当者におさえるべきポイントを教えてもらったので、これから4K動画編集向けのパソコンを購入しようと思っている人は参考にしてもらえると嬉しいです。
目次
4K動画編集とは?
動画編集というのは、ただでさえパソコンに負荷がかかる作業です。エクセルやネットサーフィンをするだけなら動作上問題がなくても、動画編集ソフトを立ち上げたら「重たい」「動作しない」というのはよく聞く話。だからこそ、しっかりとパソコンのスペックを選ばなければなりません。
4K解像度はフルHDの4倍に相当するため、パソコンにかかる負荷は爆上がりします。単純計算なら4倍高性能なパソコンが必要になるともいえます。
ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、実際に「4K」という条件が入ってくることでハードルがぐんと上がることは覚えておくほうが良いでしょう。フルHDの動画編集ならミドルクラス程度のパソコンで事足りますが、4K動画編集になるとハイエンドのパソコンが不可欠になります。
でも実際どういう基準でパソコンを選べばいいのかってわかりませんよね。そこでブランド担当者に質問をぶつけてきたという訳です。
- どの程度のスペックのパソコンを選べばよいの?
- おすすめのPCを教えてほしい
- 優しくパーツの解説をしてほしい
- 4K動画編集を快適にするには?
こういったポイントについて聞いてきましたので、ぜひぜひ参考にしてください。
Q:実際のところ4K動画編集って流行ってますか?
A:4K動画編集は大きく流行ってるとは言えませんが、撮影機材の高性能化、パソコンの処理能力の向上、編集機器環境が整ってきたことで以前より確実に需要が増えてます。
4K動画レベルになると、まだまだ一般的レベルとまでは言えないようですね。とは言え、プロの現場で求められることは当然あるでしょうし、一部のハイアマあたりにも浸透しつつあるように感じます。
4K動画編集ができるパソコンを求める人の中には、撮影機材には詳しいけどパソコンはあんまり詳しくない…という人もいるそう。メーカーに相談の連絡が入ることが増えつつあり、需要の高まりを感じているそうです。
今回の記事で、スペック選びのポイントもじっくり教えてもらいましょうね!
Q:4K動画編集に必要なスペックを教えてください
※一眼レフやミラーレスカメラで撮影した4Kデータを使って、5-10分程度の動画を作成することを前提にした場合のPCスペックについて聞いています。
動画の時間が長くなったり、高画素カメラを使っている場合はもう少し上のスペックを狙ってもらえると良いかと思います。
CPUの選び方
Q:CPUを選ぶ基準を教えてください
A:CPUはコア数の多さが処理能力の速さにつながります。最新のCore i7-10700などの製品がオススメですが、予算に余裕があればより高性能な製品をチョイスしましょう。処理時間の短縮に大きく貢献してくれるはずです。
CPUはパソコンの頭脳です。ユーザーが伝えた命令を効率的に処理するためには高性能なCPUが必要です。特に動画編集などの高負荷な作業は、その傾向がさらに顕著になります。
マウスコンピューターさんの言う「8コア数の多い製品がおすすめ」という点を補足します。よく使われるたとえですが、CPUの中には小人が住んでいて命令を実行してくれると仮定します。
それをイメージしやすいのが、下の図です。
小人の数(コア数)が多いほど、作業効率が良くなります。もちろん小人さんの能力にはちがいがあります。また追い込まれた時(高負荷時)に、どれくらい実力を発揮するかも重要になります。(ターボブースト)
組織でも仕事を抱えたら、良い人材をたくさん集めて効率的に処理したいというのが本音ですよね。似たようなことがPC内でも起こっているんですね。
どうやってCPUの性能を見分けるの?というのがCPUの型番です。
【Intel CPUの数字の意味】
CPUは基本的に「数字が大きくなるほど高性能」になります。最新世代のグレードの高いモノをチョイスするようにしましょう。
CPU | クロック(TB) | コア数 | スコア |
Core i7-9700 | 3.0GHz(4.7GHz) | 8コア8スレッド | 14470 |
Core i7-8700 | 3.2GHz(4.6GHz) | 6コア12スレッド | 13576 |
Core i5-9400 | 3.7GHz(4.6GHz) | 6コア6スレッド | 9017 |
クロック数が小人の性能、コア数が人数です。性能×数でCPUの処理能力が決まり、数字化したものがスコアです。ここではPASS MARKが公開しているスコアを掲載しています。CPUの比較や、目安を知りたい時にとても役に立ちます。
【CPU別】書き出し時間の目安
CPUの違いによって、どれくらい4K動画編集に影響するのかを見てみましょう。ミラーレス一眼で撮影した4K動画5分を、Reaolveというソフトを使って書き出した際のタイムになります。
- Core i7-9700:5分00秒
- Core i7-8700:5分30秒
- Core i5-9400:8分00秒
- Ryzen 9 3900X:3分00秒
実際にはグラボやメモリといったパーツの構成でも変化してくるので目安程度にしかなりませんが・・・それでもCore i7とCore i5の違いは、はっきりとわかりますよね。ちなみに最新のAMD製のCPUはコア数が多く、動画編集にも有利です。
・Core i7→DAIV Z7シリーズ
・Core i9→DAIV Z9シリーズ
・Ryzen 7→DAIV A7シリーズ
・Ryzen 9→DAIV A9シリーズ(カスタム)
・Core i7(ノート)→DAIV 5Nシリーズ
グラフィック(グラボ)の選び方
Q:グラフィックボードを選ぶ基準を教えてください
A:4K環境で作業するのであれば、VRAMを8GB以上搭載した製品をおすすめします。解像度ももちろんですが、マルチモニタになると特に差が出ます。
VRAMとは、映像表示部分のメモリとして使われるRAMのことです。グラフィックスメモリやビデオメモリなんて呼ばれ方もします。パソコンに使われているメモリとは違い、グラフィックのみに使われる専用のメモリになっています。
グラボの型番が同じでも、メモリ容量が違う製品があったりするので注意が必要です。
8GB以上のVRAMとなると、ハイエンドクラスの製品になってきます。4K動画を出力するだけでも大変なパソコンがある中で、それをいじくりまわして編集しようってんだから「グラボもしっかり選びましょうね」という話ですね。
現行で8GB以上のVRAMを搭載したのは以下のようなグラボです。VRAMが8GBあっても不足しそうなものや旧製品は省いています。逆にRTX2060は簡単な4K動画編集に耐える最低ラインだと思っているので入れておきました。
グラボ | VRAM | 参考価格 | スコア |
GeForce RTX2080Ti | 11GB | 150,000~ | 20647 |
GeForce RTX2080SUPER | 8GB | 100,000~ | 19562 |
GeForce RTX2080 | 8GB | 80,000~ | 19568 |
GeForce RTX2070SUPER | 8GB | 60,000~ | 18573 |
GeForce RTX2070 | 8GB | 50,000~ | 16641 |
Radeon RX 5700 XT | 8GB | 50,000~ | 16430 |
Radeon RX 5700 | 8GB | 40,000~ | 14830 |
GeForce RTX2060SUPER | 6GB | 50,000~ | 16050 |
GeForce RTX2060 | 6GB | 40,000~ | 14838 |
上位クラスのグラボは、それだけでパソコンが買えそうなくらい高額です。個人的には5万円前後の「GeForce RTX2070」「RX 5700 XT」あたりがコスパが良いように思います。予算に余裕があるならRTX 2070 SUPER以上のグラボも狙っていきたいところではあります。
本格派も納得!DAIV Z9シリーズ
- Core i7-11700搭載
- 高解像データに負けない処理能力
- クリエイターを満足させるハイエンドマシン
価格:263,780〜
最新のCore i7-11700を採用し、あらゆるクリエイティブ作業に快適性を提供。デスクトップらしい拡張性や、冷却性も備えています。ハンドルやキャスターのおかげで、デスク下から引き出したり、移動させたりといったことも容易にできるのが嬉しい。周辺機器が多くなりがちなクリエイターを満足させるデスクトップパソコンだと思います。DAIVはデザインもカッコいいですよね。
メモリの容量は?16GB?32GB以上?
Q:メモリ容量の目安ってあるのでしょうか?
A:16GBでも良いとは思いますが、利用する素材の量を考えると32GB以上が推奨されます。処理にかかる時間も短縮できますよ。
動画編集用のパソコンを検討しているなら、メモリの容量も確保したいところです。メモリが足りないとソフトが落ちてしまったり、カクカクしたりといった症状を引き起こします。
アプリを複数立ち上げたまま作業をしたい人なら32GBは必須。編集ソフトだけを立ち上げるような使い方でも16GBは最低キープしましょう。8GBは確実に足りません。
使いたいソフトに推奨環境が示されているはずなので、同時に確認することをおすすめします。
デスクトップPCなら「作業が重たいな」と感じた時に、比較的簡単にメモリを追加することができます。メモリを追加する際は、規格はしっかり確認してくださいね。
僕の場合は4K動画編集をすることは稀なので、ノートパソコンは16GBで使用しています。自作のデスクトップは、余裕をもたせるために32GBにしました。
ストレージの選び方について(SSD・HDD)
Q:ストレージの選び方を教えてください
A:SSDは必須になります。予算に余裕があればSSDの中でも高速データ転送に対応する製品をチョイスするのが望ましいです。に動画素材は一旦パソコン側(ソフト)に読み込む事になるので、その際の時間を短縮化できます。
動画というのは知っての通りデータ容量が大きいものです。そこでストレージの容量だけでなく、読み書きの速度にもこだわることで時間の節約ができるようになります。
最近はSSDをメインストレージに採用した機種も増えつつあり、パソコンの立ち上げ、データ転送、アプリ立ち上げなどキビキビした動作を体感できるようになってきています。
SSDには種類があって、SATA SSD<M.2 SSD(SATA)<NVMe M.2 SSDのように転送速度がアップします。
一般的なSSDの速度
高性能なNVMe M.2 SSDは、少し前までは高価で手が出ないところがありました。最近は価格が落ち着きつつあるので、予算が許せば選択ことをおすすめします。
高速なSSD
特にメインストレージに高性能なSSDを選択すると、別次元の快適性を得られると思います。あまり使わなくなった保存用のデータを逃がすためにHDDを活用するのが上手な使い方ではないでしょうか。
スペック的な解説は以上になります。ここからは一歩踏み込んだ解説をしていただきました。
Q:4K動画編集をより快適にするための方法があれば教えてください
処理速度はPC性能に依存するので、作業中はなるべく余計な常駐ソフトや起動ソフトはなくしてPCにかかる負荷を軽減しましょう。
どうしてもスペックが追い付かない場合は、プロクシ(プロキシ)編集という手段を用いましょう。素材を事前に軽量化することで、編集時の負荷を軽減できます。編集ソフトが対応していれば利用するのも1つの手です。
ただし、結果的に情報量をそぎ落として編集にとりかかる手段になるので、積極的にオススメはできません。あくまでも最終手段です。
Q:他に4K動画編集でおさえるべきポイントは?
高性能パソコンを使うことは説明してきた通りですが、高解像度モニタ(4K対応製品)やデュアルディスプレイ、それらを活かせる編集ソフトなどがあると良いでしょう。編集用の画面と、プレビューを分けて使えるため効率的に作業が行えます。
カラーマネジメントができるディスプレイに関しては、別記事でも書いていますので参考にしてください。
Q:DAIVで売れ筋のモデルを教えてください
これから4K動画編集を始める人(エントリー層)や、すでに本格的な編集作業をしているユーザー向けのモデルにおすすめのモデルを教えてもらいました。
DAIVブランドでは、いずれもグラフィックス(グラボ)での住み分けを行っています。CPUとメモリはある程度の水準を保ちつつ、グラフィックスパワーで選定するのがスマートな選び方になります。
これから4K動画編集を始める人(DAIV 5P/DAIV Z5)
24fps/30fpsのフルHD~4K動画編集がターゲット。
本当に動画編集が初めての人には、スペックよりも体感してもらうことが大切。初期費用をおさえつつ、不足を感じた部分を強化していくほうが結果的に予算が抑えられる可能性があります。
このクラスのパソコンは、写真編集、イラスト、DTM音楽制作あたりを軸にしているユーザーで、たまに動画を扱うという人向けだと思います。
DAIV 5P
バランス感覚抜群のノートPC!
- Core i7-10750H搭載
- 動画編集に負けない処理能力
- カジュアルに使えるスタンダードノートPC
価格:153,780〜
DAIVでは珍しいシルバーのノートパソコン。CPUの性能が高いので、高負荷な作業にも耐えられる。写真編集や簡単な動画製作におすすめのモデル。グラボはGeForce GTX1650Tiなので過度な期待は禁物だが、カジュアルに使えるのがGood!
DAIV Z5
カスタムベースにも最適!DAIV Z5
- Core i7-11700×GTX1650搭載
- 低予算でもパフォーマンスを諦めない
- ストレージ、グラボなどカスタム性抜群
価格:164,780〜
趣味で写真や映像、音楽などを楽しんでいるクリエイターの入門機的な位置づけのモデル。カスタマイズ性の高いシャーシを採用しているので、不足を感じた頃にアップグレードが可能。
DAIV A5
第3世代Ryzen 7搭載!
- Ryzen 7 3700X×GTX1650搭載
- 8コア16スレッドで動画編集に最適
- ストレージ、グラボなどカスタム性抜群
価格:131,780〜
DAIV Z5のAMD版がこちらのパソコン。CPUの性能が高いので動画編集に強く、他のクリエイティブな処理にも有効。カスタマイズでグラフィックを変更したら化けそうな気がするのは僕だけ…?
編集作業は体験済み→4K解像度にチャレンジしたい人(DAIV 5N/DAIV Z7)
フルHDクラスでの動画編集に親しんできて、これから4K動画編集にもチャレンジしたいというユーザー向けになります。数年前のPCから更新ということであれば、それなりの性能の製品を選びたいところですね。
DAIV 5N
RTX2060搭載!4Kディスプレイも選べる
- Core i7-9750H搭載
- 4K解像度に対応できるノートPC
- デスクトップ並みの処理能力
価格:208,780〜
2020年の年明けあたりから人気が爆発しているモデルで、GeForce RTX2060を搭載するなど高い処理能力を誇る。4K-UHDディスプレイを搭載したDAIV 5N OLEDもあり、美麗な映像で編集作業を楽しむことができるモデルでもある。
DAIV Z7
クリエイトスタンダード!DAIV Z7
- Core i7-11700×RX5700搭載
- ミドルラインで存在感を感じるPC
- 高解像度でも遅延のない出力を可能に!
価格:230,780〜
RAW現像からVRまで快適なクリエイティブ環境が構築できるとするのがDAIV Z7です。4K動画編集を快適に処理できるパフォーマンスを備えているデスクトップです。カスタム無しでそのまま使えるくらいの完成度なので、迷ったらコレを選択するのがおすすめ!
本格的な編集作業をしているユーザー向けのモデル(DAIV 7N/DAIV Z9)
DAIV Z9
クリエイターのためのマシン!DAIV Z9
- Core i9-9900K×RT2070搭載
- 32GBメモリを標準搭載
- こだわりつくしたいクリエイターマシン!
価格:263,780〜
プロフェッショナルユーザー向けのDAIV Z9は、Core i9を搭載した圧倒的な処理能力が魅力。高画素の写真、4K動画などのクリエイト作業でストレスフリーな環境を提供してくれます。
Macbookと比較
専門家による4K(60p)環境の動画編集の見解がよくわかる記事がこちら。→[InterBEE 2019] [Adobe day] [Premiere Pro] 4K60pレスポンス大検証
負荷のかかる4K動画編集はデスクトップで、というのは通説だったりしますが、この記事ではノートPCによる編集作業を試みているのも面白いです。人気のあるMacbookProとDAIV 5Nをテスト機として比較されています。ちょっと専門的な話で理解しにくい点もあるんですが、DAIVのコスパが光っていると感じました。
DAIVを選ぶ理由・メリットなどを教えてください。
視聴デバイス、録画デバイスがデジタルに移行する中で、視聴者に見やすいような編集作業を行う方が増えてきています。Youtubeやテレビに限らず、最後のひと手間として編集というコマが存在しています。しかしその処理にはパワーを要します。その手助けとしてクリエイターに必要な性能を提供するのがDAIVです。
クリエイターが使うことを想定し、デスクトップにはスタジオ間の移動などを想定したキャスター、取っ手、底面には窪みを設計段階で入れています。それらがあることにより、持ち運びやすさ、アクセスのしやすさといった日常使いにおける利便性を得られるように工夫を施しています。
カスタマイズの多様性とコストパフォーマンスに優れ、アフターサポートも充実しておりますので、プロユースからクリエイターを目指す方、皆さんにお勧めできます。
僕自身、マウスコンピューターさんのパソコン製造工場や、サポートセンターに足を運んで取材をさせていただいたこともあります。特に品質面へのこだわりが伝わってきたので、今ではすっかりファンになってしまったという経緯があります。
最後にひとこと
4K動画編集に必要なスペックや、おすすめのパソコンについて質問してきました。4K動画編集はこれからというところもありますが、時代は8Kとか囁かれつつもあります。
これから動画編集を始める人たちからすると、もしかすると「いつかは通る道」になるかもしれません。しっかりと必要なパフォーマンスを見極めつつ検討にあたってください。その際に、この記事が少しでも多くの人に役立つことを願っています。
最後になりましたが、マウスコンピューターさんへの感謝の気持ちで締めたいと思います。ご協力ありがとうございました。
読者の皆様には、マウスコンピューターのパソコンをご検討いただけますと幸いです。