これまで写真編集と言えば、一部のプロだけが扱うようなジャンルでした。これだけデジタル化が進んだことで、幾分か敷居が下がったようにも思います。趣味の世界でも「写真の質を高めたい」「RAW現像したい」というニーズが高まってきています。
そして、撮影した写真を編集する上で必要になるのが、正確な「色」を表示できるカラーマネジメントディスプレイです。ただこうした専門的なディスプレイは高価ですし、簡単に手が出せるような代物ではないことも事実。実際「なにを基準に選べばよいのかわからない」という声も聞かれます。
いくつか選択の基準はあるかと思いますが「もはやこれ買っておけば間違いないのでは?」と思えるのが、BenQさんから発売された「SW271」です。人気の27型4K UHDで、AdobeRGB99%カバー、ハードウェアキャリブレーション対応、HDR(ハイダイナミックレンジ)対応、インターフェースも充実していて、遮光フード付きという至れり尽くせりなアイテムです。
そんなSW271をBenQさんからお借りできました。一カ月ほど使ってみたので、感想や気になったことを書いてみたいと思います。
目次
BenQ SW271の特徴
- 27型 4K UHDの高解像度
- ハイダイナミックレンジ (HDR) 対応
- AdobeRGB99%カバーで発色が良い
- 10億色以上の10-bit対応でグラデーションが滑らか
- CalMAN認証・PANTONEカラー認証取得
- ハードウェアキャリブレーションに対応
- USB Type-C対応
- モノクロモードを搭載
- 3年間保証
BenQ「SW271」の外観デザイン
まずはSW271の外観を見てもらって、イメージをつかんでもらえたらと思います。27型の「PV270」をレビューしたときと同様に、今回もBenQさんから機材協力をいただきました。通い箱がボロボロなので、写真はカットしますがそれなりに大きな段ボールで届きますので注意。
SW271を開封していくと、1枚の診断書が入っています。それは「工場出荷時に1台1台色の調整をしましたよ」という証拠で、キャリブレーションレポートと呼ばれています。個人の環境によって多少の違いはあるでしょうが、あわててキャリブレーションする必要はなさそうです。
SW271はベゼルレス仕様となっているため、27型の割にはとてもコンパクトです。枠に意識がいかないので、作品に集中できるというメリットもあります。
24型(SW240)とのサイズ比較
僕が愛用している24型のSW240を重ねてみましたが、縦横のちがいはこの程度です。思ったよりも差はないというのが率直な感想です。ただしパネルだけではなく、スタンドやフードも含めて複合的に見るとSW271は大きく感じます。
SW240のWUXGA(1920×1200)に対し、SW271は4K UHD(3840×2160)の解像度です。サイズがわずかに大きくなるだけで、より緻密なディティールや質感を得られます。もちろん作業スペースとしても広がるので、効率的に編集を行うことができます。
フード装着時
フードを装着し余計な光をカットすることで、作品のリアルな色を確認することができます。フードは別売りの場合もありますが、SW271なら最初からセットになっています。余計な出費がかさむことはないので嬉しいところです。ノングレアで目に優しく、長時間の作業でも快適に行うことができます。
フードはバラバラの状態で送られてきますので、初見だとちょっと悩みます。「遮光フードの取り付け方法」については、BenQさんが参考動画を用意してくれています。
組み立ては簡単
組み立ては、説明書などを読むまでもなく直観的にできましたので心配無用でしょう。重さが16kg以上あり、設置は多少大変でした。
モニターの可動域はかなり広く、上下、左右への回転、チルト、ピボット表示も可能です。ディスプレイを縦にした時の圧力がすごいです(笑)
ノートパソコン(13インチクラス)を手前に置いてもディスプレイが隠れることはありません。縦に並べて配置する予定の方でも心配はいらないかと思います。
BenQの刻印は写真でははっきり見えますが、作業中に気になることは一切ありませんでした。ちなみに一番右奥が電源ボタンになります。最近はタッチパネル式のボタンも増えましたが、物理ボタンのほうが安心感を覚えます。
インターフェース
SW271は、HDMI が2個、DisplayPort が1個、USB Type Cが1個(電源供給は無し)、ヘッドフォンジャック、 Hotkey Puck用端子があります。USBをつなぐことでハブとして使えたり、側面のUSBやSDカードスロットを使うことができます。裏面ですので、使用感としては正直イマイチです。延長コードなどで液晶下部にひっぱってくると快適かと思います。
Hotkey Puckで切替が楽ちん
BenQの一部モデルには、最初からHotkey Puckという外部コントローラーが付属されています。sRGB、AdobeRGB、モノクロをボタン1つで切り替えれる他、上下左右やリターンもあるので、ディスプレイを好みに合わせて設定することができます。
BenQ「SW271」の良いところ
広色域でリアルな映像を確認できる
SW271はAdobe RGB99%をカバーしているモニターです。
一眼レフなどで撮影したRAWデータは、AdobeRGBを超える色情報をもっていますので、普通のモニターを使っても「リアルな写真」「本来の色」を見ることができません。そもそも間違った色でいくら編集しても思い通りの写真にはなりませんよね?そこでSW271のように色域の広いモニターで編集する必要があるのです。
ハードウェアキャリブレーションに対応
モニターの状態というのは日々変化します。だんだんと色がズレてくることもあるので、それを調整してやる必要があります。それを「キャリブレーション」と呼びます。
一般の人なら半年に1回くらい調整すれば十分に感じますが、使用頻度が高いなら1~2か月でキャリブレーションをかけた場合がよいこともあります。
SW271では「Palette Master Element」というソフトと「キャリブレータ」を使用することで、ディスプレイのカラーパフォーマンスを最適な状態に調整、維持することが可能です。
▼Palette Master Elementの画面
27型4K UHDで高画素カメラのデータも表示が可能
フルHD(1920×1080)の約4倍の解像度をもつ、4K UHD(3840×2160)なので、より緻密な表示が可能です。ウインドウを並べて表示したり、ブログを書きながらYouTubeを流していても作業性が損なわれることもありません。
【RAW現像/写真編集】おすすめのディスプレイモニター!という記事で紹介している、比較的安価な(数万円)ディスプレイだとどうしても解像度が低く、作業性もイマイチだったりします。最近の高画素カメラを使っている人からしたら、解像度の低いディスプレイは選びにくいというのが本音でしょう。しかしSW271なら、プロが現場で求めているスペックを満たしていますし、高画素機のRAW現像に耐えうるスペックです。
HDR対応
黒から白までのダイナミックレンジ全体を広げるハイダイナミックレンジ(HDR)にSW271は対応しています。
よくある写真のHDR合成(やや派手)とは異なり、シャドーとハイライトが自然に広がっているので、見た目に近いリアルな映像を楽しむことができます。太陽のような強い光源があるシーン、夜景、など明暗差の大きいシーンで恩恵が得られます。
BenQ「SW271」のイマイチなところ
SW271の弱点を考えてみると、サッと出てこないくらい完成度が高いんですよね。モノとして良さだけでなく、付属品や、インターフェースも充実していて不満がほとんど出てきません。ちょっとムリをして注文をつけるとしたら「価格」「キャリブレータ別売り」ってところくらいでしょうか。
価格は安いけど高い
27インチで4K対応しているディスプレイとしては、13万円強で手に入るSW271は安い部類です。とは言え、趣味で写真をやっている人の中には、予算をそこまで割けない人も少なくないでしょう。カメラやレンズに回したいという人もいるかもしれません。そういう意味では、本格的なカラーマネジメントディスプレイが後回しになりがちなのも頷ける気がしてしまいます。
あるディスプレイを作っている会社さんにお邪魔したときに聞いた話では「ディスプレイの故障率は低い」と教えてもらいました。つまり長寿命な製品なので、良い物を買っておけば安心感が手に入るということです。
僕が使っている24型のSW240なら5万円前後で手に入るので、最初の1台(エントリー)向けとしては検討しやすいかもしれません。
どうしても27型が欲しいという方で、価格を抑えたいなら「SW2700PT」を選択するという手もあります。解像度はWQHD(2560x1440)で、4Kには及びませんが実用的な範囲かと思います。肝心の色表現はほぼ同等ですし、価格はSW271の約半額です。僕のように2500万画素前後のカメラを使っているならSW2700PTで十分かもしれません。逆に3000万画素を超えるような高画素機をお使いなら、SW271に投資する価値はあるでしょう。
キャリブレータが必要
正確な写真編集をする上でキャリブレーションは必要不可欠です。なのでこれをマイナスポイントとしてあげるのは、こじつけでしかないのですが・・・やはり別途費用が発生するのは痛手ではあります。(ちょっとしたレンズが買えるくらいのお値段)SW271は出荷時にしっかりと調整されていますので、すぐにキャリブレーションが必要になるということはありません。余裕が出てきた時や、必要性を感じた時にキャリブレータを購入してマネジメントしていけばよいかと思います。
BenQ SW271で使う「Palette Master Element」は、X-Rite社と共同開発したキャリブレーションソフトウェアになります。なのでX-Rite社のキャリブレータを使うことを推奨、ほとんどi1 DISPLAY PRO一択と言っても良いでしょう。
対応キャリブレーションツール→X-Rtie i1 Display Pro / i1 Pro /i1 Pro 2 , Datacolor Spyder 4/5
こんな人におすすめ
- 写真編集用にコスパの良いディスプレイが欲しい人
- 全部盛りのカラーマネジメントディスプレイを検討している人
- 27インチ、4K UHD対応モデルが欲しい人
- ノートPCのサブモニターとして使いたい人
- USB-C対応ディスプレイが良い人
TwitterやインスタグラムをはじめとしたSNS、個人メディアのブログなどなど、写真を見てもらう環境はこれまでよりもずっと増えました。いい写真を撮りたいという純粋な欲求も高まったいると思いますし、僕だって素直に「写真がうまくなりたい」と毎日考えています。
カラーマネジメントディスプレイを使うと、写真が持っている本来の色を見ることができます。これまでは駄作に感じていたものも、じっくり見てみると味わい深かったり、RAW現像で煮詰めることで作品になり得るものをたくさん発見できるようになりました。せっかく良いカメラで撮影していても、閲覧、編集環境が並みの表現力だと活かすことができません。それってもったいないですよね?
27型の大きなディスプレイだと、細かいことに気づきやすいですし、純粋に写真を閲覧するのが楽しいです。写真だけでなく、ネット、ブログ、動画、ゲーム、なにをしても快適そのものでした。
27型4Kディスプレイとしては、最高クラスのコスパをもつSW271。あなたの写真ライフをより充実させてくれる製品であることは間違いありません。むしろ早い段階で良いディスプレイに切り替えることこそが、成長のきっかけにも感じている今日この頃です。
もし他のディスプレイが気になるということなら「BenQのカラーマネジメントディスプレイ全比較」という記事も書いているので参考にしてください
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