写真編集や動画編集、3Dオンラインゲームなど、グラフィック性能が必要なシーンは年々増えつつあります。しかしグラフィックを搭載したパソコンは高価だったり、ノートパソコン用だと非力でイマイチ物足りなかったりします。
そんなときに使いたいのが、グラフィックを外付けできる「eGPU」(外付けGPUボックス)です。ケーブル一本で簡単に接続できて、中身(グラフィック)さえ入れ替えれば必要なスペックを手に入れることができます。
今回はAKiTiO Nodeという製品を購入しましたので、所有しているMacBook Air(2018)にてテストを行います。その上でメリット、デメリットなど感じたことをレビューしていきます。
合わせて、MacにおすすめのeGPU(外付けGPU BOX)も紹介しますのでご覧ください!
目次
eGPUってなに?メリットがあるの?
出典:AKiTiO Node
そもそも「eGPUってなんなの?」という疑問があるかもしれません。簡単に言えば、ノートパソコンの外にグラフィックボードを増設できるアイテムです。
グラフィックボードは、映像データを効率的に処理するパーツで、写真や動画といったデータを扱うクリエイターには必須のアイテム。
ところがデスクトップに比べて、物理的に小さいノートパソコンでは搭載を見送られるケースがあります。もしくは搭載されていても性能的に物足りないこともしばしば・・・交換もできないため、年々性能に不足を感じるようになります。
そこで仕方なくデスクトップを使うということが多々ありました。これらの問題を解決してくれる素敵アイテムこそが「eGPU」なのです!
eGPUのメリット
- ノートパソコンのグラフィック性能を引き上げられる
- Thunderbolt 3対応のケーブル1本で増設完了
- グラボを入れ替えて使える(交換も簡単)
- 複数台のパソコンで使える
- 必要なタイミングで使える
- デスクトップに比べて省スペース
ケーブル1本で性能を大きく引き上げることが可能な夢のアイテム・・・しかも使いたいパソコンで、使いたいタイミングだけ動かせば良いです。
たとえば高負荷なオンラインゲームや、動画編集といった作業には効果を発揮します。外出時は外してしまえば、いつもの軽量なモバイルノートとして使えます。
こうしたフレキシブルな動きができるのが最大のメリットと言えるでしょう。eGPUを一度買ってしまえば、中身(グラボ)を入れ替えることで必要なスペックを満たせるので長く愛用できます。
eGPUのデメリット
- eGPU+グラボで費用がかかる
- 設置の自由度は高く無い
- 意外と場所をとる
- 絶対使えるという保証がない
- MacはNVIDIAが使えない、RADEONのみ対応
どれだけ素晴らしいアイテムでもデメリットはあります。
eGPU単体のお値段は、安いもので3万円前後。ミドルクラスのグラボを買うことを考えると、追加でもう4-5万円かかってしまいます。トータル10万円近い投資になるので「デスクトップ買った方がよくね?」ってなります(笑)
しかも相性問題なのか、環境次第では使えなかったという報告もネット上では上がっています。そして大人の事情なのか「グラフィックボード対応」と正式にはうたえないという背景もあります。(使えるんですけどね)
それなら人柱になってみようというのが今回の記事です。
ちなみにMac環境では「Blackmagic eGPU」があまりに有名ですが、例にもれず高価で手が出ません。コストに頭を抱えていた人は今回の記事が突破口になるかもしれません。
AKiTiO Nodeの特徴
- Thunderbolt™ 3 最高転送スピード 40 Gbps
- 1 PCIe (x16) スロット搭載、full-lengthや full-heightや double-width などのカードをサポートします
- 標準および大型のグラフィックスカードとも楽々で収納可能なエンクロージャー
- 400W のパワーサプライユニット内蔵で、エクストラパワー給電可能
- PCIe (x16)スロットに最大75Wを給電可能
- 4レーンのPCI Express 3.0対応可能なインタフェース
- 取り外し可能なバックパネルでdouble-widthのグラフィックスカードにも対応可能
- 簡単にデバイスを運ぶためにハンドル付き
引用:AKiTiO Node
先にも触れたとおり「使えるかわからん製品」に、まとまったお金を出すのは勇気がいります。たまたまAKiTiO Nodeの中古品で出会いがあったので、使ってみることにしました。
もともと実売価格3万円程度と比較的ローコストな製品ですが、グラボ次第ではハイエンドのワークステーションを実現可能。内部スペースや電源容量も十分なので、高性能なグラフィックを搭載しても余裕を感じます。
AKiTiO Nodeの外観写真
筐体は金属製で、ブラックを基調としたシンプルなデザイン。下手に斜線などを採用していないので、上部にゲーミングガジェットやスマホなんかをチョイ置きやすいです。
重量は4.7kgで、購入した店舗からの持ち帰りは結構しんどかった(笑)
サイドとフロントには一箇所ずつファンがあります。(計2個)写真は電源側のファンですが結構うるさめです。高温になったりはいまのところしていません。
電源はSFXサイズなので、静音性の高いパーツに交換しちゃうのも手かもしれません。
AKiTiO Nodeの組み立ての様子
背面には400W電源とThunderbolt 3のみのシンプル設計。
ネジ2本を外せば内部にアクセスが可能になります。ハンドルもあるので、移動したり交換作業したりする時にも便利です。
ハンドルがあるので手前に引くのかと思ったら、まさかの奥に押し込むタイプでした。
内部は広いのでハイエンドグラフィックカードも搭載できます。内蔵しているPCIe(x16)スロットは1個で、グラボに電力を供給するエクストラピンも2個ついています。
グラフィックスカード(ビデオカード)は、full-length, full-height, double-width対応です。幅が107mm、長さが312mmまでならOKです。
対応カードについては、公式サイトをご確認ください。
サクっとグラボを挿してしまいましょう。ここまでで大きくつまづくようなことはありません。
RADEON RX570なら、まだまだ内部に余裕を感じますね。しっかり冷却されそうなので、性能を思う存分発揮してほしいところ!
グラボがちょっと曲がっている気がしないでもないですが・・・製品の加工精度としては大雑把なのでしょう。とりあえず使えれば問題ありません。
外部ディスプレイと接続する場合は、グラフィックボードから引っ張ってきます。
AKiTiO Nodeの注意点
ここからeGPUを使うにあたって大切なことを書きます。
使いたいパソコンがThunderbolt 3に対応していることが必須条件です!非対応のPCは使えませんのでご注意を!
Thunderbolt 3は、USB-Cに接続することで最大40Gbpsの通信が可能になります。この速度こそが、外部からのグラフィックとの通信を可能にした重要なポイントです。
一見そこいらのType-Cと同じに見えますが、これはコネクタの規格が同じだからです。Type-Cの中身はUSB2.0、USB3.1、Thunderbolt 3と複数あるということです。あげた中では、Thunderbolt 3がPCleの信号を扱うことができるのでeGPUによって、グラボの性能をノートPCに引き渡せるということになります。
ちなみに先日組んだデスクトップパソコンは、Type-C規格ではありましたが、Thunderbolt 3非対応のためeGPUが使えませんでした。Windowsでもテストしたかったけど残念。
AKiTiO Nodeに付属しているThunderbolt 3です。長さは30cmしかありません。これ以上の長さになると信号にロスが生じるのか、スムーズに信号を受け渡せないそうです。
なので、設置の自由度はありません。Macbook Airは左側にしかポートがないので、PC左か、後ろに置くしかできません。
eGPUをMacで使ってみるぞ!その性能(ベンチスコア)は?
それでは、ここからはAKiTiOを使ったテストをしていきます。実際にどのくらい性能がUPしているのか楽しみです。
と、思ったら設定でつまづいてしまいました。
ご覧のように、パソコンとケーブルをつなぐだけでグラフィックスとしては認識されている様子。しかし、どうも外付けグラフィック(eGPU)が働いている様子がありませんでした。
CINEBENCHというベンチソフトでは、内臓のIntel UHD 617で認識されています。(一番下のGFX Boardがそれ)うーんやばい。。
ここで先駆者たちの知恵をかりに情報を探す旅に出ます・・・が、まぁ難航しますよね(笑)
「グラボからの信号をモニターに繋がないといけない」「Boot Campならいけるよ」「システムからいじらないと無理」「そもそも非公式だらか使えるわけないぜ」などなど、色々な情報が出てきました。おやおやハードルが上がってきたか・・・
ただ、ここで焦る必要はありませんのでご安心を!
理由は簡単で、Macbook Airでは内臓グラフィックを優先しているからでした。macOS Mojave Vr10.14以降を使っている人は、以下の手順で簡単に外部グラフィックに切り替え可能です。
- Finderを立ち上げる
- アプリケーションへ移動
- 外部GPUを使いたいアプリを探す
- 右クリックをして情報を見るを選択
- 外部GPUを優先にチェック
この手順をふんで設定した結果は?Radeon RX570が認識されました!!よかった。アプリによっては外部GPUに切り替えできないケースもあります。そこはケース・バイ・ケースですね。
OpenGLのスコアが30.96fps→55.52fpsと倍近いスコアに到達。
Geekbench Scoreの結果
Macのベンチソフトの定番「Geekbench」でもテストしてみましょう。このテストのためだけに1200円ほど課金。
まずは内臓グラフィックのIntel UHD graphics 617です。
続いてはRadeon RX570です。
ふぁっ!!!
内臓グラが3844に対し、32038へと見事にジャンプアップしました。
本来のPCleではなく、Thunderbolt3による接続のため若干(1割ほど)性能が落ちるとはいえ、これだけ性能が引き上がってくれるなら、購入に踏み切りたいと思う人もいるのではないでしょうか?もちろん、より高性能なグラボにすればもっと性能は引き出せるはずです!
iMovieなどの編集ソフトもこれまでよりずっと快適に動作します。
※追記)Windowsでのベンチマークスコア
eGPUはThunderbolt3に対応しているパソコンであれば、グラボのドライバーをインストールするだけで使うことが可能です。MacだけでなくWindowsでも使用可能という訳ですね。
今回はRadeon RX Vega M GHを搭載した「G-Tune P3」というノートパソコンにてテスト。eGPUにはRadeon RX5700を用意し、どれくらいスコアが伸びるのか計測してみます。
ベンチマークソフトは、重量級タイトルのFF15を使用。
4371(普通)⇒6546(快適)へと向上。約1.5倍のスコアになっており、あきらかにeGPUを取り付けた効果が見られます。
ノートPCのグラフィックに不満を感じた時にでも、逃げ道としてこうした対策がとれるのは便利。または自宅ではハイスペックなグラフィックを使って、モバイル時には軽量なスタイルをキープという使い方もできます。
一般的に非力になりがちなノートでも、高性能なグラフィックが使えるというのはメリットが大きいです。これくらいの性能があれば、4K解像度を扱うこともできるようになります。
参考)PC内臓グラボと比較
外部接続で性能を引き上げ可能なeGPUですが、やはり直接PCに組み込んでしまったほうがパフォーマンスはよくなる傾向にあります。
同じRadeon RX5700搭載のデスクトップPCのスコアを見てみましょう。
eGPU | PC内臓 | |
フルHD | 6546(快適) | 10087(とても快適) |
4K | 3228(普通) | 3849(普通) |
フルHDでは40%、4K解像度では20%ほどスコアに差が出ています。eGPUを使う場合、グラボによっては1ランク下のスコアになってしまうことは覚悟したほうが良いでしょう。
とは言え、もともとデスクトップを購入できる人は、eGPUを検討しないはず。この記事を読んですらいないと思いますので「落ち込み」よりも「引き上げ」の意味合いが強くなると思います。
AKiTiO Nodeの感想まとめ
非力なノートパソコンを強化できるeGPU。その効果のほどは示せたと思います。MacbookAirのCPU性能がちょっと物足りないので、Proが欲しくなりましたね。←こうやって沼に沈んでいく
Thunderbolt3に対応している必要があったり、ややコスパが悪く感じるシーンもあるとはいえメリットも多いので「買いに値する」と感じました。
僕のようにMacbookAirで使うも良し、Mac mini、Proといった製品でも満足感が得られると思いますよ!Macのグラフィック性能に頭をかかえておられる人は検討してみては?
ちゃんと使えることがわかったので、もう少しグラボの性能をあげて「Radeon RX Vega 56」あたりでも使ってみたいと思いました。
おすすめのeGPU BOX(外付けグラフィックカード)
eGPUはなにもMac純正品のeGPU Blackmagicじゃないといけない訳ではありません。うまく選ぶことでコストをずっと下げられます。
ここからは僕の独断と偏見でおすすめの外付けGPU BOXを紹介していきます。使いたいグラボがMacに対応しているかご確認の上、選択してみてください。
※AKiTiO Nodeも推奨拡張ボックスに入っていました
eGPU Blackmagic Radeon Pro 580
純正こそ至高!変な機器を使ってトラブルは引き起こしたくないという人なら、メーカーが取り扱っているeGPUを購入しましょう。Macのデザインとの親和性も高く、ラグジュアリーな環境が構築できます。ただしリッチなお値段がネック。
PowerColor Mini Pro(Radeon RX570搭載)
PowerColor Mini Proは、AMD Radeon RX 570搭載が搭載されている拡張ボックスになります。グラボの交換に自信がない人や、色々さわっている時間がない人でもすぐに使えます。フロントにUSBポートを2つ備えるので周辺機器も使えるて便利。僕が購入したAKiTiO Nodeよりもずっと小さいサイズなので、デスク周辺のスペースを抑えたい人にはおすすめ!
OWC Mercury Helios FX
OWC Mercury Helios FXは、550Wと650Wのタイプがあり、電源容量に余裕があるのが魅力。AMDのグラボはNVIDIAに比べて大食い。ハイエンドグラボを使いたい人なら余計に電源には注意したいところ。
Razer Core X
AKiTio nodeを見つけなかったら買おうと思っていたのが、RazerのeGPU BOX。理由は単純にデザインがかっこいいから。レバーで固定するタイプで、ロックを解除して引っ張るだけで内部にアクセスできるという使い勝手までデザインされているのが好印象。
人気がありすぎて品薄(高騰)なので、Razer公式サイトをチェックするのが良いかもしれません。
Sapphire Gear Box
Sapphire Gear Boxは、eGPUにしては珍しくイーサネット端子を備える。またUSB端子もあるので拡張性の乏しいMacの強い味方になってくれる。筐体もシルバーでかっこいいですし、デスク周りを明るく印象づけたい人に!
ASUSTeK XG STATION
ASUSが手掛けるeGPU BOX。知名度の高いメーカーが作っているだけに安心感がちがう。観音式にオープンする仕様が面白く、LEDによる装飾も可能なので見た目にも楽しい。USBポートを4つ搭載していたりと、拡張性も最も高いがお値段も高い。
Sonnet egfx Breakaway Puck
今回紹介する中では最もコンパクトな外付けGPU BOX。小さいながらもRadeon RX570搭載なので、MMac miniの強化などにも良さそう!45W電源供給なので、最近のMacBook Proだと少し足りない。メーカーはモバイルを推しているけど、ACが大きいので無理そう。
DELL Alienware Graphics Amplifier 15Q41
DellのゲーミングブランドであるALIENWAREシリーズなので、デザインはちょっといかつめ。460W電源内蔵で、ライトを変化させたり、ゲームの動きに合わせて点滅させたりというような設定もできるのが面白い。時々接続されなくなるなどのトラブルが報告されているのが気がかりか。
一度使ってしまうと手放せなくなるほど快適なeGPU BOX(外付けグラフィック)を紹介しました。Macの弱点であるグラフィック性能を簡単に引き上げられます。
CPU内蔵のグラフィックを使っている人や、少し前のMacを使っている人なんかは、頭を抱えているはずなので導入を検討されてみてはいかがでしょう?これまでよりもずっと快適なパソコン環境が約束されていますよ!
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